~ 一盌からピースフルネスを ~

古帛紗と裂地-緞子②-

前回に続き、ここでは緞子織りの著名な裂地についてご紹介します。

 

珠光緞子

わび茶の祖といわれる村田珠光(1423-1502)が愛用したことが名前の由来とされる。珠光が室町幕府第八代将軍・足利義政の茶の師であった頃、義政から拝領した胴服の裂地がこれであったと伝えられている。大名物「松屋肩衝茶入」の仕覆が本歌として認められている。

柄は小牡丹唐草と三ッ爪龍文、火焰文が織り出されている。

 

利休緞子

千利休(1522-1591)が愛用した黒棗の仕覆として伝えられている。緑色の地に、黄茶色で五つの点を打ち梅花文をあらわした、いわゆる利休梅鉢文が織り出されている。利休梅の由来がこの利休緞子とも言われている。

 

本能寺緞子

京都本能寺の伝来が名称の由来とされる。柄は濃紺色の地に縹色(はなだいろ)で、二重の青海波を地文として唐草と宝尽くし文を散らしたもの。日本では青海波文は海が豊穣をもたらすとの信仰により古くから用いられ、また宝尽くし文は福を招来するといわれるため大変縁起の良い文様である。大名物「油屋肩衝茶入」「種村肩衝茶入」の仕覆として用いられた。同様の文様で色違いの裂地に三雲屋緞子があるが、後年模されたものの一種とされる。

 

織部緞子

茶湯名人・古田織部(1544-1615。千利休の門下生の中でも茶の湯上手の七人をさす「利休七哲」の一人とされる。)の愛用の裂地と伝えられている。流水の地文に梅鉢文を散らしたもの、二重の青海波に梅鉢文を散らしたものがある。

2017年5月

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