~ 一盌からピースフルネスを ~

古帛紗と裂地-金襴③-

 先回、先々回に続き、今月も金襴の裂地をご紹介します。ここまですでに述べてきたように、昔から多くの人々を魅了してきた絢爛華麗な金襴。2回では様々な裂地をご紹介するには足りないと思い、3回続けての掲載としました。

 

嵯峨桐金襴

 京都・清涼寺(通称 嵯峨釈迦堂)の戸張裂として用いられていたことが裂地の由来。地文には五重の入子菱が織り出され、そこに大きく特徴的な桐文が配されている。中興名物米市茶入や金輪寺茶器の仕服としても用いられる。また、清涼寺は「源氏物語」の光源氏が造営した「嵯峨の御堂」と目されるお寺。

 

逢坂金襴

 中興名物相坂丸壷茶入の仕服として用いられたことが名称の由来。そのため、相坂金襴とも呼ばれている。七曜星文を全体に配し、その間に龍の丸文と霊芝雲文を交互に並べている。規則正しい柄の配置だが、大きさの異なる文様が組合わさっていることにより単調さは無く、目に新しい。

 

富田金襴

 京都・天龍寺四十代住持仏日常光国師の袈裟裂とも、同開山の夢窓疎石(むそうそせき)の袈裟裂であったとも言われている。湧き出るように大きくダイナミックに霊芝雲文が織り出され、その間に宝尽くし文を配している。

 

鵬雲斎家元好 紫地鳳凰金襴

 裏千家十五代鵬雲斎家元のお好み裂。紫色の地に上向き、下向きの鳳凰文が交互に配され、間には雲文が織り出されている。十五代鵬雲斎汎叟玄室は一椀を通じての世界平和を願い、「一椀からピースフルネスを」を提唱されています。

2017年11月

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