~ 一盌からピースフルネスを ~

栗きんとん

 紅葉が色づき秋も深まる頃、いろいろな秋の味覚で和菓子が作られます。栗を使った「栗きんとん」は、もとは岐阜県中津川の銘菓でしたが、最近では秋の定番和菓子になり、お茶席でもよく用いられます。「きんとん」とは、そぼろ状にした餡をまぶしてまとめた和菓子のことで、時期によって様々な菓銘・形・色のものがあり、それによって季節を感じる楽しみがあります。

 「栗茶巾」とも呼ばれるこの和菓子は、蒸した栗を白餡と混ぜ、茶巾絞りにしたとてもシンプルなもの。それゆえに、ほっくりとした栗の風味と自然な甘さが引き立ちます。栗はなめらかに裏ごしされているものや、敢えて存在感を残すため粗く潰してあるものもあります。きつく絞った濡れ晒布巾で生地を包み絞ってかたちづくられ、布巾の布目のつき方やあたまの先のつまみなど、ころんとした可愛らしいフォルムの中に職人さんの手仕事の風合いを楽しむことができます。色も形も素朴ですが、その佇まいには秋の実りや枯葉、秋風などを思わせる風情があります。

 旬の素材や季節感あるモチーフ・色合いから、和菓子を通して四季を味わうというのも、お茶席の醍醐味です。

2017年11月

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