~ 一盌からピースフルネスを ~

15. 焼く・焼き物

魚の照り焼きは火が通る間際にタレをかける

 魚を照り焼きにする場合、ある程度厚みのある魚は身に火が通る直前にタレをかけるのが原則である。まだ焼けていないうちからタレをかけると、水分や脂が身からにじみ出て、タレをかけても流れ落ちてしまう。また、タレにはたいてい甘みを加えているが、みりんや砂糖は焦げやすい。早くからかけておくと、中まで火が通らないうちに表面が焦げてしまう。

 だいたい、8~9分通り焼けたらタレをかけるが、一度にかけてしまうのではなく、二回に分けてかけるのが普通。まず一回目はタレを入れた器の上まで魚を持ってきて、玉じゃくしで全体にザーッとかける。このように一回目はタレをたっぷりかけることによって魚を冷やし、このあと日にかざしても焦げにくくする。またタレの器の上でかけることによって、タレに魚のうまみが落ちておいしくなる。

 タレをかけたあとは火から少し遠ざけるか、やや火を弱め、タレを乾かすようなつもりで焼く。表面が乾いたら、二回目のタレがけをする。二回目は、焼き床の上で、刷毛や玉じゃくしでポトポト落とすように塗ると、つやよくきれいな焼き色が付く。

 タレは2度がけすれば十分。タレをかけたあと何回も火にかけていると身が硬くなるので、特に身の厚いものでも3回くらいでしあげるようにする。

 ところで白身魚で身の薄いものは、水分が抜けやすく火の通りも早いので、タレは早めにかけ始める。焼く前にタレをかける。ただしかけるのは身のほうだけで、皮目には仕上げにひと刷毛塗るくらいでよい。初めにタレをかけてしまうと、火が通る前にこげついてしまうからである。

 タレは酒に、みりんや砂糖、醤油を加えたものが一般的。香りと色を付けるために、たまり醤油を加えることも多い。また、これだけではうまみに欠けるので、店でははもなどの白身魚の骨をカリカリに焼いて加える。これらを合わせて火にかけ、10~15%ほどに煮詰める。たいていは濃度の違うタレを2~3種類は用意して、そのときどきに合わせて使っている。

 次回は、ブリの照り焼きを紹介します。

 

2017年11月

こちらもご覧ください