~ 一盌からピースフルネスを ~

【日伯交流刊行物紹介】新刊書『ぼくのオレンジの木』

今月より、新しく『日伯交流出版物紹介』のコーナーを、作成しました。
幅広く、日本、ブラジルの文化交流の場を、設け、紹介したいと、思います。 (編集部より)

 

 世界で読み継がれているブラジルの小説 “O Meu Pé de Laranja Lima” の日本語版『ぼくのオレンジの木』を2015年11月、ポプラ社より刊行いたしました。

 

『ぼくのオレンジの木』

『ぼくのオレンジの木』

 これは、90年前のリオデジャネイロを舞台とした、ブラジルの国民的作家ジョゼ・マウロ・デ・ヴァスコンセーロスの自伝的小説です。5歳の男の子が生きるつらい現実、そこにひとりの温かい心を持った大人が登場します。人の心の温もり、すなわちポルトガル語のternura –テルヌーラがいかに大切であるかを考えさせてくれる物語です。

 苦しみにユーモアをちりばめたこの物語は、世代を超えてブラジルで読みつがれ、多くの言語に翻訳されています。映画化やTVドラマ化もなされ、舞台などでも親しまれてきました。

 

 この作品の著者ヴァスコンセーロスは、日本に大いなる憧れを抱いていました。そしてこの物語には、ブラジル人と日本人に共通する思いやりの心、茶道につながる世界があります。

 

 ブラジルに住む人々は、故郷を失った民と言えます。居住地を奪われたインディオ、アフリカから連れてこられた人、移住者、そしてその子孫たち。だれもが故郷を失った想いを受け継いでいます。

 ブラジル人が心に秘める言葉、それはサウダージとテルヌーラであると私たちは考えています。サウダージには懐かしい、寂しいという哀切感があります。サウダージを知るブラジル人は、他者の寂しさに敏感で、優しさと温かい思いやりで人に接します。この温もりこそが、抱擁感を持ったテルヌーラという言葉です。『ぼくのオレンジの木』の著者は作品の中で「人生で一番大切なものは温もり(テルヌーラ)である」と繰り返し語っています。

 ブラジル人のテルヌーラにふれた外国人は、みんなブラジルを好きになります。同じように日本人も、思いやりをもって人を心からもてなすことで愛されています。

 

 日本で生まれ大切に育まれてきた茶道。それは、日本の思いやりの心をかたちにしたものです。ブラジルのテルヌーラと日本の思いやりを感じ、それを人から人へとつないでいく・・。ブラジルの茶道は、ブラジルを、そして日本をより深く理解するための心の交流の場といえるでしょう。

 

 そしてこの作品『ぼくのオレンジの木』もまた、ブラジルの心を伝えるものです。お茶を愛し、ブラジルが好きになった日本人に、ブラジルの温かい心をもっとよく知ってもらうために、この本を読んでいただきたいと願っています。

 

※日本語版『ぼくのオレンジの木』はブラジルでもお求めになれます:
http://ぼくのオレンジの木.com

訳者:永田翼・松本乃里子

2016年4月

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