26. 福
前回の「幸」の字に続いて「幸福」という熟語を形成する「福」という字について少し考えてみましょう。この漢字を辞書で引いてみると、「さいわい、しあわせ」とでています。節分(2月3日)の日の豆まきで「福は内(ふくはうち)、鬼は外(おにはそと)という掛け声を思い出してみましょう。その「ふく」はよいこと「おに」はわるいことと皆さんご存じでしょう。
「幸」と同じく良いこと、さいわい、幸せを意味します。
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読み
音読み:「フク」
訓読み:なし。
名前(音読み・訓読み以外の読み):
「さき」、「さち」、「たる」、「とし」、「とみ」、
「むら」、「もと」、「よ」、「よし」
意味
①さいわい(幸せ)」(例:幸福)
②「幸せを与える」
③「天の助け」、「神から授かる助け」
④「祭りの時、神に供える酒肉」
「福」を含む二字熟語には、「幸福(こうふく)」、「至福(しふく)」、「祝福(しゅくふく)」などがあります。
「福」を含む二字熟語は多岐にわたり、以下のようなものがあります。
- 福相(ふくそう):幸福そうな顔つきや姿。
- 福運(ふくうん):幸運。
- 福祉(ふくし):人々の幸福と社会的な安定。
- 福音(ふくいん):良い知らせ、特にキリスト教の教え。
- 福耳(ふくみみ):福運があるとされる大きな耳たぶ。
- 福徳(ふくとく):幸福と財産。
- 福利(ふくり):幸福と利益。
- 福禄(ふくろく):幸福と財産。
- 福寿(ふくじゅ):幸福と長寿。
- 福助(ふくすけ):福を招く人形、またはその名。
- 阿多福(おたふく) – おたふく面に似た顔立ちの女性。特徴的な外見が印象的で、親しみやすさや愛嬌を感じさせる女性。
それではこの字の成り立ちを調べましょう。
会意兼形声文字です(ネ(示)+畐)。「神にいにしえを捧げる台の象形」と「神にささげる酒たるの象形」から、神に酒をささげ、しあわせになる事を祈るさまから、「幸い(しあわせ)」を意味する「福」という漢字が成り立ちました。
※「福」は「福」の略字です。

「福」という字のむかって右側、漢数字の「一」に「口」、その下に「田」と書く部分(畐)は、ふくらんだ器の形を表しますが、ここでは特に、酒樽を意味しているといいます。

左側の「ネ」と書く「示(しめす)」へんは、神への供え物を載せる机の形。
そこから「福」という漢字は、神前に酒樽を供えて幸いを求めることを表し、「さいわい、神のたすけ、恵み」といった意味をもつようになりました。
「福」の字を逆さまに飾る風習は「倒福(とうふく)」と呼ばれ、中国に古くから伝わる縁起物です。
この風習は、中国語で「福が逆さまになる」という意味の「福倒了(フー・ダオ・ラ)」と、「福が来る」という意味の「福到了(フー・ダオ・ラ)」の発音が同じであることに由来します。そのため、「福」の字を逆さまにすることで、「福が訪れる」という願いが込められています。
主に旧暦の正月(春節)に、家や店の門、壁、鴨居などに飾られ、新しい年も幸せに過ごせるようにという願いが込められています。日本では中華街などでよく見られますが、中国では逆さまになっていない「福」の字も縁起物として広く使われています。
2025年10月







