~ 一盌からピースフルネスを ~

17. 煮る・煮物 魚の煮付け

魚の煮付けにはかつおだしは使わない

 魚を煮るときのだしには一番だしは使わない。かつおのうまみはかえって邪魔になるからで、だし汁よりも酒のほうがこくが出るのでおいしく、水に酒を合わせるか、あるいは酒だけでもよいくらいである。いずれにせよ酒はたっぷり使いたい。それに砂糖などの甘みと醤油を合わせる。みりんはつやが出るが入れ過ぎると身が硬くなるので、少量に。酒を多用すれば、みりんの甘みを補うことができる。砂糖は上白糖よりグラニュー糖や水飴、あるいは氷砂糖を用いたほうがあっさりと仕上がる。香りが大切なので、醤油は濃口。たまり醤油を足してもよいが、はじめから加えると香りが飛んでしまい、また身の中まで黒くなってしまうので、煮上がる直前に加えてさっと回すようにする。
 ウドやれんこん、ふき、ごぼうなどの野菜や、豆腐、ふなどを合わせてもおいしいが、これらは仕上げのときに鍋に入れてさっと煮るだけでよい。だから野菜類は当然下ゆでしておく必要がある。

 

魚の煮付けには合わせだしを 煮たてたところに魚を入れる

 魚は煮れば煮るほど味が逃げる。冷たいだし汁の中に魚を入れてから魚を煮たてたのでは、煮汁の中にうまみが逃げてしまう。魚の煮付けは、あらかじめ調味して沸騰させた煮汁に入れてさっと煮るのが原則で、そうすれば表面が急激に固まって、中のうまみが逃げず、煮崩れもしない。
 魚を鍋底にすき間なく並べることのできる鍋を用いることが大切で、煮汁の分量は魚の8割がたかぶるくらいが適量。煮汁が多いと、落とし蓋をしても魚がおどってしまうし、魚のうまみが無駄に煮汁に出てしまう。盛りつけたときに、煮汁が皿に全部入って、鍋には残らないくらいの分量に仕上げるのが目安である。
 手順としてはまず、魚はどんなものでも必ず熱湯をかけて霜降りをし、うろこや血合い、ぬめりを取り除く。そして煮立てた煮汁で煮ていくが、このとき煮汁が沸騰したところに魚を入れるより、鍋に魚を並べておいいたところに、別鍋で沸騰させた煮汁を注ぐほうが作業しやすい。
 煮ている途中で魚を返すことができないので、落とし蓋をして全体に煮汁がゆきわたるようにする。この場合は、木の落とし蓋がよい。魚がおどらないよう、多少重みがほしいからである。また、煮ている途中で、何度か煮汁をかけてやることも必要である。火加減は、落とし蓋の周りからあぶくがたえず出ているぐらいがよく、早く火を通すことが肝心なので、コトコトと静かに煮ていくようではだめ。
 鍋に蓋はしない。魚の生臭みは湯気で蒸発していくので、鍋蓋をすると臭みがこもってしまう。また、煮汁を煮詰めていくことで魚のうまみを凝縮させるので、蓋をせずに水分をどんどん蒸発させて煮詰めていく。煮汁が煮詰まっていくと、落とし蓋がきかなくなってくる場合があるが、そんなときは落とし蓋をはずして玉じゃくしで煮汁を回すようにする。
 魚の煮付けというのは、魚の持ち味を生かす煮方で、煮汁を中までしみ込ませる必要はない。だから、盛りつけるときには煮汁をたっぷりかけて、ほぐした身に煮汁を付けながらいただくようにする。また煮上がったところが一番おいしいので、煮ておいて食べるときに火を入れ直すということは避けたい。

2018年4月

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