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もったいないの日本文化 ~ “供養”と民話“つくも神” 「針供養、筆供養、茶筅供養」

 今回は、「もったいないの日本文化」の最終回となります。
 当初この草稿をたちあげたとき、読者の皆様、「もったいない」という言葉の中に、「なにが」「どうして」と、不思議に疑問に思ったことでしょう。こうして二年間に亘り、「もったいない」を連載するうちに、自ずから「もったいない」が、見えてきました。
 今回の「供養」は、そのまとめにもなります。

 「供養」とは、サンスクリット語のプージャ-、又はプージャナーです。「尊敬」を意味します。仏、菩薩、諸天などに、香・華・燈明・飲食(おんじき)等の供物を、真心から捧げることで、日本の民間信仰では、死者、先祖に対する追善供養のことをいいます。
 動物供養、鏡供養、写真供養、経典供養、仏壇供養、印章供養、人形供養等あげられますが、ここでは、針、筆、茶筅供養をとりあげましょう。

 

【針供養】

 折れ、曲がり、錆びなどで使えなくなった縫い針を供養し、近くの神社に納める行事。中国の風習からきており、平安時代の清和天皇によって、針供養の堂が京都の法輪寺に建立されました。
 二月八日の針供養の日には、大きなコンニャクにもろもろの色糸を付けた大針を指して供養し、針仕事の上達を祈願します。
 関西では、12月8日の”事始め”に、関東では、2月8日の”事納め”に「すべての物には精霊が宿っている」という感謝の気持で行います。他に、福岡県の門司の淡島神社など有名です。

 

【筆供養】

 役目を終えた筆に対する感謝と共に、不要の筆、使い古しの筆を供養し、書道の上達を願い浄火の中に筆を投じます。京都東福寺塔頭の正覚庵(11/23)広島県安芸郡熊野町、鎌倉や奈良でも筆供養、筆祭りが行われ、菅原天満宮などでも、書道上達祈願、学業成就、受験祈願等が行われます。

 

【茶筅供養】

 使い古した茶筅に感謝の気持ちを込め、焚き上げて供養します。
 東京文京区大本山護国寺では、毎年12月の第一の日曜日に茶筅供養が行われ、大本山成田山新勝寺では、昨年4月28日に茶筅供養が行われました。この成田山書道美術館には、「茶筅塚」があります。鎌倉建長寺でも、「茶筅塚」「茶碗塚」などあります。
 2018年は、松平不昧公の”200年祭”が行われ、菩提寺の月照寺では、4月22日に茶筅供養が営まれました。

 

民話【つくも神】

 この民話は、古い道具には魂が宿るという話です。
 作られて100年以上たった道具には魂が宿り、人の心を惑わすといいます。これが”つくも神”なのです。毎年、新年を迎えるころに大掃除をするのは、この”つくも神”の災難にあわないようにするためです。
 ある年の暮れの京都で、洛中洛外から古道具が捨てられました。
 捨てられた古道具は、「われわれは長年家々の家具となって、いっしょうけんめい奉公していたというのに、道端に捨てられて牛や馬にけられなくてはならないとは、何と恨めしい、妖怪になって仕返ししてやろう」ということで妖怪たちは、京都の船岡山の後ろの長坂に住み、人に祟っておりました。
 これを帝、時の関白、僧正が集まり法要をして、そこに8人の護法童子が現れ、妖怪を退治し、後に、妖怪たちが出家した話です。

 このように供養とは、仏様や亡くなった人を偲び、花や供物を捧げ、神仏に心から祈ることです。このように、本来供養は、亡くなった人や、祖先に対して行われるものですが、日本では昔から、身の回りで使っていた、愛用の品々を供養する慣習が伝わっています。

2018年12月

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