~ 一盌からピースフルネスを ~

7. 造り <赤身魚、白身魚、かつお>

 今月から魚の作り方について取り上げます。最初はお造りです。

 

赤身の造りは厚く、白身は薄く切る

 造りにするときの基本原則は、赤身の魚は厚く切り、白身魚は薄めに切るということ。

 まぐろやかつおなどの赤身の魚は身が柔らかく、薄切りにすると歯ごたえがなくなるので、平造りや角造りなど、厚く切る。一方白身魚は、たいや平目、おこぜに代表されるように身が締まって歯ごたえがあるため、厚く切るとなかなか噛み切れない。そこで薄造り、そぎ造りなどのように薄く切る。

 ただ、同じ魚でも天然ものか養殖か、あるいは背身か腹身かなどによって、厚さを違えると良い。たとえばたいは平造りにすることが多いが、天然ものの場合は身が締まって歯ごたえがあるので、薄めに造り、養殖ものは厚めに造る。あるいはまぐろでも背身は脂分が少ないのでやや大きく切ったほうがおいしい。それに対して腹身、つまりトロは脂分が多く、大きく切ると醤油とのバランスが悪いので、やや小さく切る。いずれにせよ、口に余る大きさには切らないことが大切である。

 

かつおのたたきは塩を振ってから焼く

 ふつうかつおの「たたき」といえば、皮だけを焼いて造りにしていただくものをさすが、本来はこれは「焼霜(やきしも)造り」。たたきとはもともと、このように焼霜造りにしたあと、ポン酢か三杯酢のような合わせ酢をかけて、その上にねぎ、しょうが、しそ、みょうがなどの香りの強い野菜をのせ、たたいて味をしみ込ませたものをいう。いずれにしても、皮は生のままでは噛み切りにくく口に残ってしまうので、皮に火を通しておく。ここまでの調理が一般に広まって、「たたき」と呼ばれるようになったと思われる。

 たいていは皮に焼き目を付けたあと、氷水に落として身を冷やしていると思うが、どうしても焼いた香ばしさがなくなってしまう。そのため、まず、かつおをさばいたら、焼く前に冷蔵庫で芯ま
で充分に冷やしておく。よく冷やしておけば、あぶったあと水に落とさなくても身まで温かくなることはない。

 次に案外省略されているのが、焼く前に塩をすること。塩のおかげで表面がパリッと固まり、内部のうまみが溶け出すのを防いでくれるのである。また、皮の香りも香ばしくなる。ただし、あくまでも焼く直前に、塩辛くならない程度に振ること。早くから振っておくと、水分が出てうまみが
失われてしまう。

 あぶるときはまず皮目のほうを強火に近付けて、一気に焦がす。次に身のほうを、色が白く変わる程度にさっとあぶる。家庭ではフライパンで焼いてもよい。フライパンは充分熱しておいて、た
ちまち焼き目が付くようにしておく。

2016年6月

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