~ 一盌からピースフルネスを ~

ブラジル裏千家の歴史(2004年まで)‐ 後半

ブラジル日本百年史

第四節 趣味・娯楽各論 より

(1) 茶道

1.裏千家 ②

 パラナ連邦大学、ロンドリーナ州立大学での『集中茶道講座12時間』をはじめ、1983年には、サンパウロ美術館 (MASP)で行われた「立体茶道展」、1988年の「サンパウロ大茶の湯」、1991年~1993年にかけて「Tea Road展」、1995年日伯修好条約締結百周年記念行事「茶の湯文化展」(MASP) などが実施されてきた。茶の湯文化展の際には千宗之若宗匠(現16代千宗室家元)、容子夫妻来泊。 このとき“モンドリアン茶室・テルコン茶室・ピラミット茶室”等ブラジル風土に合った新しいイメージの茶室が設営され、来場者を楽しませた。1999年頃から、ブラジル現地航空会社の始めた、マナー教育として茶の湯がとり入られる程、一般化してきた。

 1999年は、国際交流基金と共催で「日本の形ーわびの造形」展、2004年は、裏千家ブラジル50周年記念に合わせ、ブラジル日本文化協会と共催で、イビラプエラ公園内日本館での茶会、在サンパウロ日本国総領事館と共催の「ジャパン・ウイーク」で『道としての日本文化』の出版記念、ピネーロス・クラブにおける 「日本の夕べ」等が行われた。そして、2008年ブラジル日本移民百周年記念の年には、年間にわたり多岐の茶の湯行事がくりひろげられた。

 「伯栄庵」茶室には、「ヴィヴァ・ジャポン(Viva Japão)」の影響で6歳~17歳位の多くの学生が訪れ、茶道に触れた。毎年行われる「日本祭り」(ブラジル日本都道府県人会連合会主催)に加えて、リオ・デ・ジャネイロで行われた「大日本展」、サンパウロ・アニャンビーで行われた、「日本週間」では10日間、日本庭園の中に茶室が設営された。

 1996年には、クリスティーナ・モレイラ・ダ・ロシャが、茶の湯に関する論文を発表している。

 現在、ブラジル人男性の愛好者も増えている。また、ブラジルでも学校茶道のとりくみが行われ、大志万学院等では正課として茶の湯をとり入れ、毎月160名の生徒が稽古に励んでいるが、茶の湯は、茶室という “場”を必要としている為、他日本語学校での普及率はまだ低いのが現状である。こうして現在まで、56年を経過した裏千家茶道は確実にブラジル社会に浸透してきているといえるだろう。

 茶道への関心の持ち方は禅に興味を持って入ってきている人、茶道の精神性にひかれ修業する人、茶道を通して日本文化に触れたいなど動機はさまざまだ。当初、移民の方々の故郷への望郷(ノスタルジア)で始めた方々も、もっとその精神性をほりさげたいと、少し形がかわってきている。”形“ や “型“を守る茶道は、他の日本文化に比べて、難しいものがある。茶道を習得するためには年月がかかるからだ。しかし、将来ブラジル生まれの師匠が生まれ、ブラジルの教場「伯栄庵」で指導を続けてくれることであろう。以下、年表的に「ブラジル茶道の歩み」を記すことにする。

 

資料1 ブラジル茶道の歩み

• 1954年
 サンパウロ市制四百年祭に、イビラプエーラ公園内に「日本館」が建設された。その「日本館」内の茶室披きに、茶道文化使節として、裏千家の千宗興(裏千家15世 千宗室氏の若宗匠時代の名前)氏、舎弟の納屋嘉治氏が来泊した。
 武田俊男、芳枝(のちの宗南、宗芳氏)個人宅に千宗興氏をむかえ、ブラジルにおける初稽古。
 同年10月15日茶道の門下生の集まりとして、裏千家ブラジル支部が結成され74名に入門許状が授与された。初代支部長に山本喜誉司就任。

・1955年
 京都裏千家からは、ブラジル文化協会内3階に、茶室が寄贈され、15世千宗室氏は、1954年を始めとし都合4回来泊している。
 ブラジル支部発足以来、毎年宗家からは、講師1名を1ヶ月から2ヶ月間派遣し、普及及び実技の向上につとめてきた。

・1955年~56年
 宗家から永井宗圭業躰を派遣普及向上に務める。

・1962年
 宗家よりサンパウロに二畳組立茶室特参。

・1964年6月
 千宗興、登三子夫人、横山宗樹業躰、ブラジル東本願寺(藤井奏輪番)の供茶の為来泊。山本喜誉司氏の墓参、供茶を行う。

・6月19日山本喜誉司
 千宗興、登三子夫人 文化協会講堂にて文化講演会。

・1965年
 千宗興リオに文化使節として来泊。そのおり四畳半組立茶室持参。その後、サンパウロ大学日本文化研究所に寄贈。(1977年)

・1970年7月
 ブラジル支部結成15周年記念式典をサンパウロ美術館にて行う。千宗室家元、登三子夫人、 納屋嘉治、阿部宗正業躰来泊、カテドラル協会にて献茶の儀。

・1978年
 ブラジル日本文化協会内茶室「伯栄庵」を4階に移築し、裏千家本部の直轄の茶室とし、同年8月裏千家から普及強化のため、初代駐在員として、林宗慶氏を派遣。ブラジル出張所を法人化して、本格的に茶道普及にのりだす。

・1979年3月
 茶の湯の参加とデモンストレーション.於ピニェイロスクラブ。

・1979年9月より
 サンパウロ大学芸術コミュニケーション学部 (ECA)大学院生に、フランチェスカ・カバリー教授と共に茶道講座開講(正課)、同時にサンパウロ大学課外授業(当時鈴木悌一日文研所長)として、茶道講座開始し、現在に至っている。

・1999年9月
 「日本の形ーわびの造形」展国際交流基金と共催。サンパウロ日本文化センター(基金文化ホール)。

・2004年
 中南米茶道普及50周年ということで、メキシコ、ブラジル、ペルー、アルゼンチン等で多くの記念行事が予定されている。

2025年5月