~ 一盌からピースフルネスを ~

和の文様-楽器尽くし-

今回の文様のテーマは「楽器尽くし」です。

様々な楽器を散らした文様のことで、雅楽で使われる古典楽器がモチーフとなっています。
美しい音色を響かせるこれらの楽器は、古来より神へ伝える道具と考えられ縁起が良いとされていました。見た目にも優雅な楽器が散らばったこの文様は楽しげで、今にも美しい調べが聞こえてきそうです。ここではそれぞれのモチーフについて学んでいきます。

 

【琵琶(びわ)】
琵琶は弦楽器の一つで指、もしくはバチで弦を弾いて演奏します。起源は中国で、宮廷音楽の中でも重要な楽器として扱われていました。後に日本へ伝わり、雅楽で使われる「楽琵琶(がくびわ)」の他、盲目の僧によりお経を唱えるのに使われた「盲僧琵琶(もうそうびわ)」、ここから派生した「薩摩琵琶(さつまびわ)」、平家物語の語りものに使われた「平家琵琶(へいけびわ)」などがあります。

【横笛(よこぶえ)】
横に構えて吹く笛の総称を言います。和楽器としては雅楽で使われる「龍笛(りゅうてき)」「高麗笛(こまぶえ)」「神楽笛(かぐらぶえ)」や、能で使われる「能管(のうかん)」、お囃子や歌舞伎音楽、民謡にも使われる「篠笛(しのぶえ)」などがあります。

【鼓(つづみ)】
砂時計型、もしくはドラム缶型の胴の両端に紐で革を強く張り、手で打ち鳴らす打楽器で、能や歌舞伎のお囃子で使われます。革を張るのに使う紐は「調緒(しらべお)」と呼ばれます。文様化された鼓では革部分や調緒が華やかに描かれることが多いです。

【琴(こと)】
日本人に馴染み深い弦楽器である箏・琴を文様化したものです。細長く印象的な形の琴は華やかに装飾されそれ単体で着物や帯の柄となることも少なくない。また、音の高低を調整する「琴柱(ことじ)」という道具を使った文様もあり、有名なものに「斧琴菊(よきこときく)文様」があります。斧琴菊を「善き事を聞く」とかけた判じ絵で、歌舞伎文様の一つとされ三代目尾上菊五郎が愛用したと言われています。

【笙(しょう)】
雅楽で使われる管楽器の一つです。17本の竹管が束ねられており、竹管についている指穴を押さえ下部にある吹口から息を吸ったり吐いたりして音を出します。鳳凰が翼を休めている姿に似ていることから、鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれます。

2020年11月

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