~ 一盌からピースフルネスを ~

和の文様-鶴・亀-

 今回の文様のテーマは「鶴・亀」です。

 新年のおめでたい雰囲気の中で鶴や亀の吉祥文様を身の周りにおくと、より一層気持ちが華やぎます。文様の種類や意味を学ぶことで、初詣や初釜など新年の行事をさらに楽しめるのではないでしょうか。

 鶴は千年、亀は万年といい長寿のイメージが強い生き物ですが、「鶴は千年」という言葉は古代中国の書物「淮南子(えなんじ)―説林訓」の一説、「鶴寿千歳(かくじゅせんざい)」が由来と言われています。鶴は千年を寿命とする、という意味です。また霊亀という亀は不老不死の仙人が住む蓬莱山を背負っているとされ古代中国の四霊の一つとされました。藻のように長い尾を持った亀は「蓑亀(みのがめ)」といい同じく長寿の象徴です。

 

【飛鶴文(とびづるもん)】

鶴が飛んでいる姿を意匠化した文様です。群れを成す様子を表現した文様もあり、華やかで優雅な文様です。慶事で頻繁に目にするモチーフであり、門出を祝う場面とも相まって花嫁衣裳などにも用いられる文様です。

【立鶴文(たちづるもん)】

鶴が立って羽を休めている状態を表した文様で、凛とした姿が印象的です。伊藤若冲が描いた「竹梅双鶴図」「立鶴図」なども有名です。

【松喰鶴文(まつくいづるもん)】

松の小枝を咥えた鶴を文様化したものです。花喰鳥文様の一つで、元々オウムや鳳凰など異国の鳥がモチーフでしたが、平安時代に和様化し、より日本人に身近な鶴が用いられたと言われています。

 

【鶴亀文】

前述の飛鶴文や立鶴文がその延命長寿、吉祥の意味合いから工芸品としても多く用いられたのと同様に、この鶴亀文も工芸品や婚礼衣装に頻繁に見られます。これに松竹梅を取り合わせた「松竹梅鶴亀文」は、さらなる瑞兆を表した文様です。

【亀甲文】

正六角形を繋いだ幾何学模様で、亀の甲羅に見立てて亀甲文と呼ばれます。正六角形の中に剣花菱をあしらった「亀甲に剣花菱」は出雲大社の御神紋として有名です。

[花菱亀甲文]

【毘沙門亀甲文】

3つの正六角形を山の形のように1つに繋いだものを繰り返す幾何学模様です。仏教における仏像で、四天王の一尊を担う毘沙門天の衣装や甲冑に使われたことが名前の由来です。

2019年12月

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