~ 一盌からピースフルネスを ~

9. スイカについて

夏の風物詩、スイカ。みずみずしく爽やかな甘味が涼をもたらしてくれますね。

薬膳の世界では「天然の白虎湯(びゃっことう:熱を冷まし潤いをもたらす漢方薬)」といわれており、重宝される食材のひとつです。

起源はアフリカ南部の熱帯および砂漠地帯にかけて、紀元前4000年代には栽培が始まっていたそうです。日本には平安時代に中国(当時の唐国)から伝来したといわれています。江戸時代後期ではスイカは栽培が全国に広がり多くの人々に親しまれてきました。

ブラジルの2月は日差しも厳しい盛夏、スイカで夏の疲れを解消しましょう。

 

【効能について】

五味(味の特性)「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(かん味)」では甘味。五行説の「寒性・涼性・平性・温性・熱性」の五性(食べ物の性質)でスイカは寒性、身体の熱を冷まし、潤いを補いのどの渇きをとる働きがあります。

加えてスイカの成分は90%が水分でカリウムを含み、利尿作用があります。むくみ・体のほてりに効き目があります。暑さで頭がすっきりしないときや気持ちを落ち着かせたいときにも有効です。

特に赤い実と外皮の間の白い層にはより多くのカリウムが含まれているので、この部分のほうがむくみや利尿作用により効果的です。

なお、スイカの果実に含まれる果糖はエネルギー補給になりますので熱中症対策にも優れています。

 

【食品として】

水分をたっぷり含んだスイカはジュースにしてもとても美味しく、ブラジルの街角でもよく飲まれています。
果実と皮の間の白い部分ですが、外皮を除き、白い部分を薄く切って漬物にしたり酢の物にしたりと色々と楽しむことができます。

「スイカの練り切り」
画像提供:irodori.sp
https://www.instagram.com/irodori.sp/

スイカは薬膳の観点では冷やさず常温で食す方がよしとしています。これは体を冷やし過ぎないようにするためです。

スイカを食べ過ぎると、水分の摂り過ぎとなり腎臓に負担がかかるのですが、塩をかけていただくと、風味がよくなるとともに、腎臓の働きを助けます。塩分を摂るのは、水分調節をする鹹味(かんみ)の作用を利かせるためでもあります。

茶席で供されるお菓子にもスイカを模した練り切りもあります。緑・赤・白・黒というスイカの配色が愛らしく、夏のお茶事に興趣を添えてくれますね。

2024年2月

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