~ 一盌からピースフルネスを ~

8. 造り <あらい>

今月は「造り」の中のあらいについて取り上げます。

 

あらいはそぎ切りにする

鯉のあらい

鯉のあらい

 あらいは、冷水の中で軽く洗うようにして身を締める、造りの手法。くせがあって脂分の多い魚に向いており、水で洗うことによって、脂分や臭みを取り除き、同時に死後硬直の進行を遅らせて身が柔らかくなるのをくい止める。

 代表的なのは鯉のあらい。ふなやあゆなど川魚を生で食べるにはたいていあらいにする。また、なかば淡水魚ともいえるすずきも、あらいにするとおいしい。特に夏のすずきは脂分が多く、あらいに向いている。いずれにしても、鮮度のよいものを使うのが第一条件である。

 身を三枚におろして造っていくが、薄いそぎ身にすること。川魚も海の魚も、弾力のある歯ごたえを楽しむもので、厚く切ってしまうと噛み切れない。また、薄くないと、あらいにしたときに臭みが抜けず、中まで冷たくならない。

 冷水で洗うと最初は脂分で水が白く濁ったり汚れが出たりするので、手で引き上げて新しい冷水に2~3 分つけておくとよい。

 あらいに使う水は、井戸水がよいといわれてきた。井戸水のミネラル成分が、身を締めて歯ごたえを増すためで、今ならミネラルウォーターを使えばよい。

 

えびの造りはかならずあらいにする

 えびを造りにするときは、必ずあらいにする。えびには独特のにおいがあり、また生のまま殻をむいて置いておくとアクが出て黒ずむため、冷水で一度さっと洗って臭みやアクを取り除きたいからである。いずれの手法を取るかはえびの種類によって異なる。

 殻付きのまま湯通しするメリットは、殻の赤い色を身に移し、色美しくすると同時に、甘味を増すため。だから、甘えびのように、生のほうが柔らかく甘みのあるえびは、湯通ししない。これに対して身に弾力のある車えびなどは、湯通しすると色が鮮やかに出て、甘みも増す。

 伊勢えびは湯通ししない。伊勢えびの身は、5節に分かれている(実際は6節だが、一番尾に近い部分は小さ過ぎて食べない)。それぞれ2層になっていて、外側の身に包まれた真ん中の身は、左右2つに分かれており、このくせのない、真ん中の身だけ使うのが最高の造り。生の上品な味わいを損なわないため、そのままか、または冷水に漬けて冷たくしていただく程度にする。だが殻にくっついた外側の身と一緒に造る場合は、殻の臭みや色が移ったりするので、かならずあらいにする。

2016年8月