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茶席での着物 <女性編>

茶席での着物 <女性編>

前回に続き、今回は茶席での女性の着物についてお話ししましょう。
女性の着物には、訪問着、付け下げ、色無地、小紋など、様々な種類があります。
その中でも、茶席にふさわしいのはどのような装いでしょうか。
ここでは基本的なルールや決まり事をご紹介します。

 

【正式なお茶会でのきもの】

 まず、着物は大きく分けて2種類があります。一つ目はいわゆる「やわらかもの」(=やわらかい着物)と呼ばれる染めの着物で、白い糸のまま織って布にして、後で染めます。二つ目は「かたもの」(=かたい着物)と呼ばれる織りの着物で、糸そのものを先に染色し、布に織りあげながら模様を出していきます。

「やわらかもの」(やわらかい着物)=染めの着物
「かたもの」(かたい着物)=織りの着物

 着物にはそれぞれ「格」があり、その格によって着物の着用シーンが異なります。大きく2つに分けると、やわらかい染めの着物はフォーマル向け、かたい織りの着物はカジュアル向けの格付けになります。この2つのうち、茶会にふさわしいのはやわらかものです。
 茶道では立ち座りすることが多く、やわらかものは生地が体に沿うので所作がしやすく、理にかなっています。
 やわらかものには、訪問着、付け下げ、色無地、江戸小紋、小紋といった種類の着物があります。
 それぞれの特徴については過去の記事で詳しく説明していますのでぜひ参考にしてみてください。

 一方、かたものと言えば紬(つむぎ)の着物があります。これは洋服に例えるとカジュアルなデニムに近いので、いくら高価なものでも正式な場にはふさわしくありません。また、麻や木綿の着物もかたものに分類されます。

 フォーマルな席である茶会では略礼装が基本となります。
 茶会用に一枚持っておきたい着物は、オールマイティーな色無地の着物です。
 色無地は一つ紋を入れておくと、正式な茶会に略礼装として着用できます。着物を控えめにするかわりに、帯は金銀糸が入ったフォーマル向けの華やかな袋帯を合わせます。

 茶席には、大人数で催される気軽な茶会から、茶事と呼ばれる改まった少人数の茶会まで色々あります。そのため、その会の「格」や趣旨にふさわしい着物を選ぶことが大切です。
 例えば、格式の高い茶会には、略礼装にあたる訪問着や色無地などがおすすめです。一方、カジュアルな大寄せの茶会には、普段着に近い小紋でも構いません。

 お茶の世界では季節感を大事にしますから、着物の装いも同じく、冬は袷、春から秋は単衣、真夏は薄物といったように季節に合わせた仕立てを選びましょう。例えば真夏の茶席であれば絽や紗の薄物が一般的ですが、それに伴い帯や帯揚げなども絽や紗など透け感のある夏向けのタイプを合わせることで見た目が涼しげになります。
 また、季節を感じさせる文様の着物を身にまとうのも良いでしょう。花柄の着物は一般的なルールとして、実際の花が咲くタイミングよりも半月程度早く取り入れて、季節を少し先取りするのが粋とされます。

 茶会では、茶室のしつらえや茶道具類が引き立って場の雰囲気に馴染むような、控えめでありながら華やかさが感じられる上品な装いを心がけると良いでしょう。

 

【お稽古でのきもの】

 お稽古で着物を着る際には、水などに濡れて袖や裾を汚すこともありますので、汚れても気兼ねしないカジュアルな着物を選ぶといいでしょう。正絹の着物は水に濡れると輪ジミができてしまうので注意が必要です。撥水加工がされた着物や洗える素材の着物を選ぶのも選択肢の一つです。

 色無地は、柄がなくシンプルで、帯の合わせ方によって格を上げたり下げたりできるので、茶道の初心者やお稽古にも活用できてオールマイティーです。お稽古の際には、色無地にカジュアルな名古屋帯を合わせてお茶席とは別のコーディネートを楽しむのもいいでしょう。
 またお稽古着としてなら、普段着に近い小紋や、紬や浴衣などカジュアルな着物でも問題ありません。

 普段から着物を着慣れていると、茶会に呼ばれた際に着物姿でも自然な所作で振る舞うことができます。
 洋服でお稽古することももちろん可能ですが、着物を着ていると気持ちが引き締まりますよ。
 お茶会だけでなく、たまにはお稽古にも着物を着て茶の湯を楽しんでみませんか。

2020年5月

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