~ 一盌からピースフルネスを ~

和の文様-松-

 2017年3月から始めた「古帛紗と裂地」の続き物として、2019年からは「和の文様」について皆様と一緒に学んでいきたいと思います。

 「古帛紗と裂地」では裂地に織られている柄全体について説明をしてきましたが、この「和の文様」ではそれらのモチーフ一つ一つにより注目して進めていきたいと考えています。

 まず初めに、日本では祝い事などで頻繁に用いられる「松竹梅」の文様についてそれぞれ「松」「竹」「梅」に分けてご紹介していきます。今回は「松」です。

 松の木は厳しい寒さに耐え一年を通して葉の色が変わらないことから、「常盤木(ときわぎ)」と呼ばれ昔から「長寿」の象徴とされてきました。お正月の季節、一般的に12月13日~1月7日(地域によっては1月15日まで)の間、年神様(としがみさま)をお迎えする目印として門松を飾りますがこれも松に長寿の意味が込められているためと考えられます。

 また日本で「松竹梅」が吉祥文として扱われるように、中国でも古代より、厳しい環境でも節操を守り心持を高く持つ者の象徴として「歳寒三友(さいかんさんゆう)」と呼ばれ親しまれてきました。

 こうしたことから、松は季節を問わず喜ばれ様々な意匠となって表現されています。

 

【老松(おいまつ)】
 樹齢の高い松をモチーフに、その年月と風格を表した文様です。長い年月に耐える根と太い幹、歴史を感じる曲折した枝が表現されたものが多いです。

【若松】
 芽吹いたばかりの松をモチーフにした文様で、よく見ると先に新芽がついているのが特徴です。若々しく、これから成長するものとして新春や祝い事に適しているとされています。また、一説では奈良・平安時代の宮中の正月行事である「子の日の遊び」に由来するとも言われています。

【根引き松】
 先の【若松】に出てきた「子の日の遊び」で用いられる根引き松を文様としたものです。
 「子の日の遊び」は「小松引き」とも言われ、お正月の初めの子の日に行う宮中の宴会行事の一つです。この日山に登り遠く四方を望めば邪気を払い憂いを除くという、中国の習わしからきているようです。日本では野山で若松を引く「小松引き」を行ったり「若菜摘み」で取った若菜を食べて、長寿を願い邪気を払おうとしていました。これはその際引いた根のついた松を、半紙で包み水引で結んだものの文様です。

【松唐草】
 長寿を意味する松に、それが永遠に続くようにという意味を込めて唐草が加えられた文様。

【笠松】
 四方に広がる枝と、そこについた松の葉を笠に見立てた文様です。着物や帯、食器類など様々な場面で目にすることが多い文様です。幾つも重ね合わせることで、奥行きや重厚感を出しています。

【松葉】
 その名の通り松の葉をモチーフにした文様です。松の葉は二本の細長い針のような葉が付け根で一つに繋がっていて、これを「二葉松(にようまつ)」といいます。葉が枯れて落ちる時もこの二本の葉が離れないため、大変縁起が良いものとされ、夫婦円満の意味もある文様です。

【唐松】
 唐松は日本固有の種類で、一般的な松と違い秋になると葉が紅葉し、冬には落ちます。そして春になると若々しい新芽が芽吹きます。この唐松の新芽と葉を、上からみて放射線状に捉えた文様です。

唐松

【松に藤】
 「男は松、女は藤」として日本では古くから和歌や随筆に読まれてきました。藤が松に絡まるように、女も男に寄りすがるべきという当時の生活規範に影響されていることも考えられますが、松との組み合わせが藤をより美しく引き立てるとされていたようです。

 
松に藤(それぞれのイメージ写真)

2019年2月

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