~ 一盌からピースフルネスを ~

和の文様-竹-

 前回の「松」に続いて、今回は松竹梅のうちの「竹」についてご紹介します。

 竹は松と同じく一年を通して緑色を保つことや、根を多く張り成長が早く力強く真っすぐに伸びていくことから、歳寒三友として例えられ、子孫繁栄の象徴とされてきました。
 「竹取物語」に出てくる竹から生まれたかぐや姫がたった三ヶ月で大人に成長する様も、竹の生命力の強さをよく表しているように感じます。

 また「松」の回で取り上げた門松の土台に竹が使われているのも、こうした吉祥の意味が込められているためと考えられます。能舞台の鏡板には松と竹が描かれていますが、門松と同様にこの二つの植物は古くから神聖なものとして共に扱われてきたことがわかります。
 そして竹には節があります。竹が高く伸びていくことが出来るのは節があるからと言われています。人生における節目、礼節の大切さは禅語でも「竹有上下節(竹に上下の節あり)」と表現されています。

 

【竹文】
 竹文には竹林を表したものや、茎と節に焦点を合わせたもの、丸紋にしたもの、小紋では竹縞など色々な文様があります。竹は人々の生活用品としても親しまれてきた素材のため、様々な文様が広く庶民の間にも伝わっていきました。

 

【四君子(しくんし)】
 竹、梅、菊、蘭の四つの植物による文様を四君子と呼びます。「君子」とは学徳があり人格も優れた立派な人物を指した言葉で、この四つの植物の高貴さや美しさを君子にたとえたものです。

【四君子】のうち、菊と梅

【雪持ち笹(ゆきもちざさ)】
 笹は厳密に言うと竹と異なる植物ですが、竹と共に描かれることの多い植物です。雪持ち笹はその笹をメインにした文様で、笹に雪が積もった様子が表現されています。雪の重さにも折れず、しなやかに耐え忍ぶ姿が印象的な文様です。

【雪持ち笹】

【竹に虎】
 文様、というよりも題材に近いのですが、竹は古来より頻繁に虎と共に描かれてきました。中国では虎は竹林に住むといわれており、静かな竹林から現れる姿にはその威厳や豪気さが強調されています。また竹と虎の組み合わせは、法隆寺にある玉虫厨子(たまむしのずし)の「捨身飼虎図(しゃしんしこず)」にも見て取れます。

【竹に雀】
 上記に同じく、雀も竹と共に描かれてきたモチーフの一つで、取り合わせの良いもの、という意味があります。またこの文様は家紋に使われている事でも有名です。上杉家や伊達家は、竹に雀の文様を家紋に取り入れていました。

2019年4月

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