~ 一盌からピースフルネスを ~

13. 風流

『ご趣味は?』と聞かれ、『俳句です』とか『茶の湯です』と答えると、『風流なご趣味ですね』と。答えが返ってくる。日本人は、花見や月見、上述の趣味に、情緒を感じて、風流という言葉を使う。

ところが改めて「風流とは?」と聞かれるとその答えは意外と難しい。

1上品な趣があること。みやびなこと。2世俗から離れて、詩歌・書画等の趣味の道に遊ぶこと。3美しく着飾ること。数寄すきをこらすこと。4先人の残した良い流儀。遺風いふう等。
類語に風雅、関連語に、雅趣、雅致、閑雅などがある。

風流の言葉は、中世の室町時代の芸能の一つで、華やかな衣装や仮装を身に着けて、はやし者の伴奏で群舞したところからきている。室町後期から、江戸初期に流行った「風流踊」に由縁し、風流といえば、この「風流踊」を指した。これが猿楽・能・狂言に影響し、後世、歌舞伎・人形浄瑠璃などにも影響を与える。中世以降の日本において高揚した美意識の一つ。
が、他説として「禅」の言葉ともいわれている。風流とは、禅の言葉で、「風に揺らぐ」という禅的境地が、風流という言葉に結実した。一口に言えば、人間の五感を封じ、自然と一体化することを支柱としている。芥川作家の玄侑宗久げんゆうそうきゅう氏は、風流は、禅語の揺らぎ楽しむ心の余裕と解釈している。

又、作家の司馬遼太郎氏や日本文化研究家のドナルド・キーン氏は、その対談で、風流人の代表を、室町幕府八代将軍、足利義政を挙げている。家督問題で、京都の町を戦火に置いた応仁の乱の、中心人物。早々と隠居した。茶室の元祖といわれる銀閣寺の閑雅なたたずまいは、豪華絢爛な金閣寺と比較される、風流の極致といった感がある。政治的手腕はさておき。

風流でないことを無風流ぶふうりゅうという

風流傘ふりゅがさは、傘鉾の一つ。祭礼の行列に等に持ち歩く、美しく飾った長柄の傘。風流車ふりゅうくるまは、祭礼の行列などに引き歩く、美しく飾った車で、装飾を施した山車だしの類。

菊川英山の「風流夕涼三美人」という版画も情緒がある。

 

風流傘

風流車

  Photo: twinmount

2021年9月

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