~ 一盌からピースフルネスを ~

11. 雪月花

雪月花(せつげっか)は、四季折々の自然の風物の中で、雅趣のあるものとされるものの総称です。日本の芸術・美術の特質の一つとしてもとらえられており、詩歌やその他芸能にも表現されています。
この雪月花(ゆき、つき、はなともいう)は、この順序で用いられることが、伝統的です。この伝統的な日本の美の感覚は、連想される語として様々な場所に用いられます。

雪月花文様の古袱紗

ノーベル賞作家の川端康成氏は、『美の存在と発見――美しい日本の私』〈 The Existence and Discovery of beauty 翻訳者 V,H,ビリエルモ〉の中で「雪月花」という言葉を自然と日本人の関係を語る上でのキーワードにしています。

これがまあつひの栖すみかか雪五尺     一茶
行く春を近江の人と惜しみける       芭蕉
初空に鶴千羽舞う幻の           康成
去年今年貫く棒の如きもの         虚子

このように川端康成氏は、文中に多くの俳句、詩歌を引用し日本の美しさを表現しておられます。
禅の道元禅師は、「春は花、夏ホトトギス、秋は月、冬雪さえてすずしかりけり」と悟りの心境を述べておられます。

さて、1914の宝塚歌劇団の組は、雪組、月組、花組いう組み分けがされたのも興味あることです。
いか時代が下がると雪月花は、主に雪、月、花の取り合わせとして理解され、「三種の景物」として理解され様になった。

日本の三景    雪 天橋立 月 松島  花(紅葉を花に見立て)宮島

日本の三名園   雪 兼六園 月 後楽園 花(梅)偕楽園

また茶の湯では、裏千家では、玄々斎が考案した“雪月花”という七事式があり、7,8人が雪月花の札をひき、雪にあたった人が、菓子を食べ月の人が茶を飲み、花の人が点前を行います。

現代で、雪月花の名の因むものとして、新型リゾート列車「えちごトキめきリゾート雪月花」、箱根強羅温泉の「季の湯 雪月花」、小倉懐紙「雪月花」、神戸みやげ「御影雪月花」常盤堂、椿の花の「氷室雪月花」中島みゆきのピアノソロ「雪月花」、 謎解き私小説『雪月花』(北村薫著)等が挙げられます。

(2021年 2月記)

2021年3月

こちらもご覧ください

  • 22. 見得(みえ)

    22. 見得(みえ)

    見得とは、歌舞伎の演技・演出で使われる言葉です。感情の盛り上がった場面で、役者が一時動きを止めて目立った表情・姿勢を正すことです…
  • 20. 江戸紫 えどむらさき

    20. 江戸紫 えどむらさき

    江戸紫、(えどむらさき)とは、江戸で染められた紫の意で、青味みを帯びた紫のことです。江戸時代の日本人が、「粋」だと感じていた色です…
  • 19. もののあはれ(もののあわれ)

    19. もののあはれ(もののあわれ)

    「もののあはれ」とは、どう意味なのだろうか?これは、現代語でいう「物」、すなわち「物質」を意味するものではない。古代の日本人は、目に見えないもの、霊的な存在の物事の総体を「もの」と呼んでいた。「モノノケ」「物思い」は、そうした意味も強く残した言葉である。「もののあはれ」の「もの」は、自然界や人の世にまつわる物事のすべてを指していると理解すればいいだろう…
  • 18. 秘すれば花

    18. 秘すれば花

    -秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず- この言葉は、世阿弥がその著『風姿花伝』で述べた一節です。 秘めるからこそ花になり、秘めねば花の価値は消え失せてしまうという意味です。
  • 17. 序破急

    17. 序破急

    序破急とは日本の雅楽の舞楽から出た概念です。「序」は、「いとぐち」物事の始まり」で、「破」は「序」の静けさを破り、内容が展開していきます。続く「急」では、クライマックスへと一気に盛り上がり、速やかに閉めくくるという様子を表します…